【ch2】舞台の幕が開くと押し寄せる艶っぽい香り~人の心をとらえる旅役者

大衆演劇にハマる理由~旅役者の魅力にとりつかれて

初めまして、大衆演劇ライターのお萩と申します。
「大衆演劇」というと、皆さんはどんなイメージをお持ちですか?

・色っぽい女形
・役者さんにご祝儀がいっぱいつく

などのイメージは広く知られているところでしょうか。

・一か月ごとに各地を巡業している
・観劇料が安い(1000~2000円前後)
・毎日演目が替わる

このあたりは、ときどきメディアで大衆演劇特集があると取り上げられているポイントですね。 全部その通りなのですが、この芸能の魅力にとりつかれているファンとしては、舞台の内容や濃度がもっと取り上げられたら嬉しいなぁと思っていました。

だから2016年、CSテレ朝チャンネルで、大衆演劇の公演を3時間丸ごと放送する番組が始まったときにはビックリ。 舞台をそのままテレビで疑似体験できるんです! いきなり劇場に行くのはハードルが高いという方にもぴったりの番組です。 それでは初めての方に向けて、大衆演劇の魅力について少しだけ私見を…。

2017年6月24日放送 劇団九州男

●心にしみる芝居
大衆演劇の芝居には、たくさんの演目があります。演目が毎日替わるので、1劇団が200~300本の芝居を持っていることも多いです。何代にも渡って伝わってきた古い芝居もあれば、新しく台本を書き下ろした芝居も。

そのセリフに耳を澄ますと、ハッと気づかされる深い味わいがあります。
「弟が生きて帰ってきてくれたなら…たとえどんな姿でも生きて帰ってくれさえすれば、両の腕(かいな)でしっかりと抱きしめてやります…」
芝居:『遠州しぶき』

「(知的にぼんやりした弟に対して兄が言うセリフ)なぁ、あんちゃん、そんなむつかしい話はわからねぇよ」
芝居:『月夜に泣いた一文銭』

「俺といたって良いことなんて何もねえぞ」
「そんなことねぇ!おめぇはおらを助けてくれた。故郷(くに)の長持唄も歌ってくれた。もうおらには良いことがあった!」
芝居:『雪の長持唄』

時代劇が主ですが、セリフはとてもわかりやすい言葉です。その中に、いつの時代も変わることのない兄弟愛や親子愛、人と人が心を結わえようとするときの温もりが、ぽっかりと浮かび上がります。
大劇場の演劇に比べ、ずっと簡素な道具と人数で演じられる大衆演劇の芝居。それだけに、役者はセリフと所作で観客を惹きつけます。

心の奥底に落ちるセリフを一つ聞いたあとは、舞台からお土産をいただいたような気持ちです。

2017年5月27日放送 紀伊国屋章太郎古希祝い 澤村一門特別公演

●人の心をとらえる旅役者
役者はそれぞれ独特の化粧をしています。舞台の幕が開くと、まず化粧と香水の匂いがふわーっと客席に押し寄せます。

そこにスポットライトを浴びて、役者が一人立つとき…。
この人は普通の人ではない、旅役者以外の何者でもない、という艶っぽい香りが立ちのぼってくるんです。
大衆演劇の役者は、年中各地を移動し、休みなく舞台に立ち続ける独特の職業です。彼らの持つ“人の心をとらえる力”、あれは何なのでしょう。人に連れられて行った初めての観劇で、舞台上の役者さんと目が合った瞬間、この世界にどハマりしたという人も。

2019年4月20日放送 <劇団天華>三吉演芸場

全国で100以上の劇団が毎日公演している大衆演劇。
テレビの画面越しに、あなたの心をとらえて放さない役者さんに出会うかもしれません。

最新作の放送は4/20(土)18:00~21:00、テレ朝チャンネル2です。<劇団天華>三吉演芸場

お芝居と舞踊ショーからなる、たっぷり3時間公演を丸々放送。大衆演劇の世界をのぞいてみてくださいね。

寄稿・大衆演劇ライター お萩





LINE はてブ Pocket +1
関連記事